日名子実三による、昭和6(1931)年大阪朝日新聞主催「全関西写真連盟 撮影競技大会」メダルです。
パルテノンをバックに花と重なりながら踊る女性像が描かれています。
裸婦像のメダルというのは、日名子といえど実は珍しい。
写真芸術に対する賞メダルとして、このような姿を選んだのでしょう。
そうして選ばれたこの女性は誰でしょうか?
バックのパルテノンからギリシャ神話ではないかと推測します。
描かれた花はユリ?それとも
アヤメ?
アヤメを模した紋章
フルール・ド・リスは芸術の象徴でもありますね。
であるとすれば、この女性はアヤメを聖花とする女神
イーリスでしょうか?
パルテノン上空にある半円はイーリスが虹の女神であることを表しているのかもしれません。
ではなぜ女神イーリスがバレエのように踊っているのでしょう?
この女性はとても肉感的で、象徴され定型化される「女神」を描いているように思えません。
日名子実三は、実際のダンサーをモデルにこの女性を描いたのかも。
ん....よくわかりません!
女神についての考察はとりあえずここまでにして、次はこのメダルを用いた「全関西写真連盟 撮影競技大会」についてです。
明治後半から昭和初期にかけて、文芸や美術(文人画や水彩、または自由画など)等のアマチュアによる表現文化が発展します。
写真もまた同様で、1925(大正14)年には、朝日新聞社の力添えによって樺太・朝鮮・台湾までを含む約420の写真団体の連合機関として全関西写真連盟が設立します。
後に全関東写真連盟ができ、この年に両者を統合した日本写真連盟が設立されます。
全関西写真連盟は設立の翌年より展覧会を行っており、この「撮影競技大会」はその中でも撮影者が特定の日時に集まって撮影会を行う競技大会として行われたと考えられます。
関西の写真界については
コチラに詳しく紹介されていました。
撮影競技大会についてはわかりませんでしたが、とても奥行きのある文化が関西の地で発展していたようです。
こういった地方の個別の文化が大東亜戦争によってフラット(一律化)になります。
戦時下のアマチュア文化については、大塚英志著『大政翼賛会のメディアミックス 「翼賛一家」と参加するファシズム』でも詳しく書かれています。
翼賛体制によって文化が一律化されるんですね。
地方個別の文化が統一されたメディアで均され、一色となるわけです。
そう考えると、東京で活躍する彫刻家である日名子をこのメダルの製作者に選んだのは、そういった時代の表れだったのかもしれません。
それでも、地方という実際の距離を伴う不自由は、それゆえに異なる文化を作ってきます。
東京至上主義であった日本の彫刻史ですが、地方の異なる彫刻文化があるはずです。
最近はそのような文化に興味を持っています。