「THE・STUDIO An Illustrated Magazine of Fine & Applied Art」とは、1893年にイギリスで創刊されたの月刊美術雑誌です。
副題に「美術・応用美術の絵入り雑誌」と強調しているように、アール・ヌーヴォー等による応用美術の紹介に力を注ぎ、イギリスはじめヨーロッパ中の建築家、デザイナーに多大な影響を与えます。
日本でも、夏目漱石が定期購入していたり、高村光太郎が初めてロダンの作品「考える人」と接したのもこの雑誌からでした。
そして、1913(大正2)年6月14日版に、上記の日本(当時の)現代彫刻を紹介した記事が載ります。
記事を書いたのは原田治郎。
この6月版の原田治郎の記事では「MODERN TENDENCIES IN JAPANESE SCULPTURE(日本彫刻の現代的傾向)」と題して、当代の彫刻家が紹介されます。
とはいえ、日本の現代彫刻の事など全く知らないであろう読者の為に、仏像等の古代からの彫刻(私としては「彫刻」という言葉ができる前に存在した造形物を「彫刻」というのに違和感あるのですが)の紹介から始めます。
図像が紹介された作家は以下の通り
米原雲海「SERENITY」(木彫)
山崎朝雲「GUARDIAN GODDESS OF CHIKUBUSHIMA」(木彫)
山崎朝雲「THE SACRED COW」(木彫)
太田南海「A COOL BREEZE」(木彫)
吉田芳明「KASHO, A DISCIPLE OFT THE BUDDHA」(木彫)
内藤伸「A GIRL OF THE FUJIWARA PERIOD」(木彫)
新海竹太郎「SAKYUMEI(A CHINESE HISTORIAN)」(木彫)
新海竹太郎「THE ANNIVERSARY OF THE VICTORY」(木彫)
池田勇八「GOATS」(塑像)
小倉右一郎「ON THE VERGE OF AGE」(塑像)
北村正信「A RUSTIC」(塑像)
朝倉文夫「YOUTH」(塑像)
朝倉文夫「MY FATHER」(塑像)
朝倉文夫「MY MOTHER」(塑像)
建畠大夢「ON THE BEACH」(塑像)
北村四海「PRAYING FOR HELP」(大理石)
官展系作家が多いですね。
高村光雲等の第一世代が無く、また平櫛田中ら院展のみの作家もありません。
萩原守衛も光太郎もありません。
朝倉文夫が3点あって、北村西望が無いのは政治か趣味か.....
そして、記事の最後には日本の彫刻がまだ西洋に追い付いていない事を認め、ロダンの作品にある高貴さが足りないと評します。
「In on relation to the Infinite and Eternal they come nearest to understanding each other.
Unless it be in the struggle towards the solution of these problems and in their sincere attitude towards the sacred relation, they cannnot possibly hope to understand the fundamental differences of the East and the West, and thus achieve the perfect harmony-station of the two.」
原田治郎は、欧米と日本が、その違いを理解しながら調和すること。
これを「彫刻」に望んでいたようです。