2018年11月23日金曜日
日名子実三 作「第二回千代田生命陸上競技大会」メダル
日名子実三による「第二回千代田生命陸上競技大会」のメダルです。
今は無き千代田生命は、明治37年の設立です。
当時、このような会社主催の競技大会が行われ、多くのメダルが作製されました。
日名子も多くのメダルを制作しており、これもその一つだと言えます。
ただし、この「第二回千代田生命陸上競技大会」のメダルは、日名子の他のメダルと異なり、彼の作品に多くある写実的なモチーフではありません。
どこか古代ギリシアかローマを思わせるデザイン性の高いモチーフになっています。
二人の裸の男性走者が、太陽を跨ぎつつ、同じような体勢で重なり合い、どこかユーモアを感じさせます。
このメダル以外で、日名子のこういったモチーフは、思い浮かびません。
このメダルの原型は、大分県立美術館の所蔵となっています。
http://opamwww.opam.jp/collection/detail/work_info/7182;jsessionid=2318F598633C3EB5D769672D063AF0BF?artId=636&artCondflg=1
そこには、このメダルの原型が、「陸上競技奨励大会参加章」「東京陸上競技協会」「本院貫井間十哩競走」と幾つか使用された事が書かれています。
人気の作品だったのでしょう。
ただ制作年が昭和8年となっていますが、先に紹介しました「第二回千代田生命陸上競技大会」のメダルには、昭和7年と刻まれています。
もしかしたら、もう少し早く制作された作品なのかもしれません。
2018年11月17日土曜日
齋藤素巌 作「杉村七太郎教授」レリーフ
齋藤素巌による「杉村七太郎教授」のレリーフです。
左側に篆書で「杉村七太郎教授」と、右側に大正5年-昭和16年とあります。
下のほうに「素巌」の銘がありますね。
斉藤素巌のレリーフは、破綻なく、うまいですね!
畑正吉より線が細く柔らかい感じがします。
おっさんの像なのに、どこか色気を感じるのですよね。
そのモチーフの杉村七太郎は明治12年生まれ、腎結核の研究で知られた東北帝大(現東北大学)教授でした。
「大正5年-昭和16年」は、東北帝大教授を勤めた間にあたり、このレリーフは、それを記念したものだと思われます。
ただし、どのようにこのレリーフが用いられ、何を顕彰されたのかは不明です。
また、どういった経緯で齋藤素巌に依頼されたのかもわかりません。
それでも、先に書いたように、レリーフに用いられた文字が篆書であることから、戦前の作だと思われます。
この篆書ですが、当時のメダル等にはよく使われます。特に構造社作家によるスポーツのメダルに多い。
一瞥しただけでは読めないこの書体は、きっと「かっこいいから」とか言う軟派な理由で構造社の若手が使い始めたのではないかと悪推量します。
「杉村七太郎教授」の「村」の字が、わざわざ「邨」に変えられているのですね。これがかっこつけでなくてなんであろう?(それとも、そういう決まりがあるのか?)
はたまた、メダルという作品に用いる「印」として、印であれば篆書と使い始めたのでしょうか?
ただ、海外から学んだメダルと言う媒体に用いる書体に、篆書を用いるのは、古典回帰の手法であることは確かです。
戦時下の書体の歴史というのは、調べがいがありそうですね。
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