2021年11月15日月曜日

日名子実三 作 昭和5年 第12回関東学生陸上競技対抗選手権大会 メダル



日名子実三作、昭和5年 「第12回関東学生陸上競技対抗選手権大会」メダルです。
久しぶりの日名子の作品です。
まだまだ知らない作品があるものなんですね。

弓を引く神武天皇像でしょうか?
後輪と弓の形をメダルの円形に沿わせ、弓を引く肉体による直線で構成された日名子らしいデザインになってます。
弓を引く像といえば、ブールデルの『弓をひくヘラクレス』や平櫛田中の『活人箭』などが有名です。そういった作品を参照しつつ、日名子らしく浮彫でまとめられた秀作だと思います。

コロナが流行りだしてから、ぐっとメダルの収集量が減りました。
経済活動の縮小だけでなく、人の動き自体が減り、こういうニッチで需要の無い物の世に出てくる機会も減ってしまったのだと思います。
メダルやレリーフを展覧会などでお見せする機会も減りました。
それでも、こうした彫刻世界に興味ある方にあるだろうと、こうして記事を書き続けます。
もし、どこかで展示してみたいという方ありましたら、どうぞご連絡下さい。
nakakakatsu@gmail.com

2021年11月1日月曜日

昭和17年9月日本美術新報社発行「旬刊美術新報」―白衣勇士の美術―号













昭和17年9月に日本美術新報社によって発行された「旬刊美術新報」35号です。
特集は「白衣勇士の美術」。
白衣勇士とは傷痍軍人の事ですね。
この特集号では、軍事保護院や第一陸軍病院、民間の忠愛美術院で行われてた、傷痍軍人らによる作品と美術製作プログラムを紹介しています。
茶碗や花器の製作、日本画の技法の習得、上野動物園での写生、義手を使った絵画制作等々。

読んでいて驚いたのが、このプログラムの目的が、工芸的な技術の習得だけでなく、傷痍軍人たちの「精神修養」だとしている事です。つまり身体だけでなく、傷ついた心の為に行われていると考えられます。
『陸軍病院の美術教育は、芸術を通して傷病兵に豊かな情操と光明を与えて、それが将来の職業準備の教育となり、人格統治と職業能力を増進させることにある。薬物のみによらずして精神的創痍の治療ともなす。言い換えれば、職能増強、精神修養、治療の訓練と言う様な目標の下に教育を行っている。』

日本人は『芸術が心を豊かにする』という、ある意味で信仰とも呼べるものを持っています。そのように芸術を受容し、価値としてきました。
このプログラムは、こういった信仰がベースにあって考えられたプログラムなのでしょう。
そしてそれは、大きくとれば芸術療法(アートセラピー)とも呼べるものだと思います。
戦前の日本がそれを行っていたと言うことに驚きます。
同年代の他国で同じような試みは行われていたのでしょうか?