前回に続き、藤井浩祐です。
この「藤井浩祐先生作品個展集」の絵葉書は、藤井浩祐が個展を行った際に展示した小品を撮影し、絵葉書にしたものだと思われます。
この絵葉書にされた個展の時期は不明です。
藤井浩祐は、画廊で個展を行った最初の彫刻家と言われています。
1914(大正3)年に銀座の画廊での初個展の後も、いくつかの展示を行っていると思われ、この絵葉書の個展もその一つだと考えられます。
絵葉書にされた作品は、現在も売買されていて、ヤフオクなんかでも見かける事ができます。
この個展時が、またはその後か、結構な数が鋳造されているのでしょう。
この絵葉書の好きなところは、背景がそのまま写されているところです。
当時の彫刻の絵葉書の多くが、背景を布で隠したり、塗りつぶしたり処置しているのですが、この絵葉書は展示の風景のまま撮られています。
きっとこれらが小品だからでしょうが、その結果、身近にある彫刻と言った藤井浩祐作品が持つ軽やかさを際立たせています。
彼は人体塑像の他に、メダルや工芸作品を多く扱いましたが、そのどれにも彼の作家性が貫いています。
それは平櫛田中や石井鶴三ら、またその後の彫刻を純化しようとした作家とは異なる態度です。
これに高村光太郎も加えても良いのですが、そんな彫刻道という様なあり方を日本近代の彫刻は求めてきました。
藤井浩祐という作家は、そこから外れる作家だったのですね。
ですから、彼は日本の近代彫刻史からしたら周辺の作家として扱われます。
しかし、それはつまり欧米の作家か現代のアーティストに似た彫刻家だったと言えます。
この捩れを体現しているのが、藤井浩祐なのですね。