僕の研究している日本の表現主義受容について、ちょっと面白い本を見つけたので紹介です。
明治以降の日本の彫刻界では、ロダンの影響を大きく受け、新しい彫塑作家たちが生まれました。
では、独自の歴史を持っていた木彫はどうであったかと言えば、ロダン風の木彫を行なってみたりしつつも、特に日本美術院系の木彫作家たちが、所謂置物彫刻、床の間彫刻、民芸的で風俗的な彫刻の中に近代性を見出し、研究を始めます。
例えば木村五郎が民芸の中にある純粋美術を彫刻化し、橋本平八が円空を発見します。
その時、彼らの思想的な根拠の一つとなったのが、欧州においてロダン以降の新しい彫刻として生まれた表現主義彫刻ではなかったか。
これについては当時の彫刻家たちの言があまりなく、よくわかっていません。
ただ、1925年(大正14年)には『建築写真類聚』として「表現主義の彫刻」という作品集が発行されています。
また、今回手に入れたが写真の一氏義良著「西洋美術の知識」で、この同じく大正14年発行の本にも、ドイツ表現主義の彫刻家であるエルンスト・バルラハが紹介されていました。
さらに、この「あふむき」という、彫り跡を残す印象的な作品は、内藤伸の「山上」に良く似ています。
ただし、「山上」が大正3年作なので、この本のおよそ10年前に作成されたということになり、直接的な影響はなかったろうとは思います。
では、その10年前に内藤伸はどんな情報を持っていたのか、まだまだ研究が必要のようです。