椹木野衣 著「アウトサイダー・アート入門」に、恩師である三頭谷鷹史 著「 宿命の画天使たち 山下清・沼祐一・他」が紹介されていました。
その影響でしょうか、実はその山下清をプロデュースした式場隆三郎の著書をコレクションしています。
式場隆三郎 著「ヴァン・ゴッホの耳切事件」サイン本
式場隆三郎という精神科医は、山下清だけでなく、ゴッホについての啓蒙書を多く著し、また「アウトサイダー・アート入門」にもありましたが、二笑亭の紹介などをしたりしています。
いわゆるプロデューサーみたいなものですね。
私の蔵書をちょっとのぞくと、「戦争と脳」「炎と色」「ゴッホの素描」「山下清作品集」「宿命の藝術」「ロートレック」「四十からの無病生活」「ファン・ホッホの生涯と精神病」etc...と彼自身の書いた本が本棚に並んでいます。
そんな多くの著作を世に出した式場隆三郎ですが、実は彼について論じた本というのは無いのですよね。
私は、山下清や二笑亭よりも「式場隆三郎」という人物が面白いと思うのですよ。
セックス・ピストルズも好きだけどマルコム・マクラーレンの方に惹かれます。
平賀源内とか、「モハメド・アリ vs アントニオ猪木戦」をプロデュースした康芳夫とか、こういった山師は魅力的だと感じるのですよね。
どこかで秋元康が麻雀する映像を見たのだけど、なかなか背中が煤けてて面白かった。
「式場隆三郎」もそういう傑出したプロデューサー(山師)の匂いを感じるのです。
彼は、精神科医として高村光太郎の妻智恵子の診察を行うといった医療活動を行いつつ、柳宗悦やバーナード・リーチなどの知識人と交流を持ち、山下清などのいわゆるアール・ブリュットに関わり、ゴッホの研究と啓蒙を行うという表の側面と、戦後のカストリ雑誌における性教育と称したエロ本に著述をするといった裏(?)の面を持っています。
こういう縦横無尽の姿が魅力なんです。
現代でも「脳」と付ければなんでも学術的(のように)語ってしまう茂木健○郎という人がいますが、「式場隆三郎」も精神科医という肩書きで、どんなものでも語りえてしまう。
その結果、山下清を「あぁ、あのタンクトップ着たおじさんね」 と誰もがイメージできる現状を生み出してしまっている。
それは良い面、悪い面あるだろうけど、そのダイナミズムは面白い。
後は、彼についてまとめた本か、展示なんかがあればな~(希望)。