2018年5月23日水曜日

イワン・メシュトロウィッチの木彫

 大正13年の「意匠美術写真類聚. 第2期 第5輯  メストロウィッチの彫刻集」より
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/976839
メシュトロウィッチの作品は、戦前の構造社ら彫塑作家に大きな影響を与えました。
では彼の木彫はどうだったでしょう?


 この作品集にある木彫は、木材を縦に切り、木の形状そのままに像を彫っています。
像の背景には鑿跡が残り、平面全体を強く印象付けています。
私の知識の範囲だけで言えば、戦前の日本に於いてこのような表現主義的な木彫のレリーフは無かったのではないかと思います。

 戦前の表現主義的な木彫作家と言えば橋本平八ですが、彼の木の姿を生かして制作された作品にも、このようなレリーフは無かったのでは。
ただ、橋本平八は鉈彫を意図して制作しており、鑿跡を残した作品はあります。

 橋本平八は、師匠の佐藤朝山や弟の北園克衛の影響で海外の作品にも明るく、もしかしたら彼の鉈彫や木の姿を生かす思想は、円空や東北の仏像だけでなく、イワン・メシュトロウィッチの木彫の影響があったのかもしれませんね。



2018年5月12日土曜日

Intermission 藤田嗣治 本の仕事

現在、目黒区美術館で『没後50年 藤田嗣治 本のしごと』展が6月10日まで行われています。
さすがに希少本とはいきませんが、私のコレクションより、藤田が挿絵を描いた本の紹介です。
まずは、1929年の「Michel GEORGES-MICHEL著 Les Montparnos. Roman illustré par les Montparnos.」
モンパルナスに集まった画家たちの絵が掲載された本書ですが、表紙は藤田の自画像です。

パリの寵児となった藤田の、この正面を見据える自画像から、それを自覚的に演出する彼の気概を感じますね...

もう一冊は「YOUKI DESNOS LES CONFIDENCE DE YOUKI」。
こちらは戦後1957年の本、「お雪」ことリュシー・バドゥの回想録です。
こちらも表紙は元夫の藤田のもの。
中にも藤田の自画像があります。

この挿絵にあるように日本語で「勉強」と「働け」を掲げ、正座して絵を描き、そしてモンパルナスのカフェで女性に抱かれる...この矛盾したあり方を体現しているのが明治生まれの男、藤田嗣治であり、彼の魅力なんですよね。

2018年5月5日土曜日

Intermission 戦時下の絵画

防空頭巾を被った男子の図
日本画の様ですが、時代、作家ともに不明です。
もしかしたら戦後のものかもしれません。

作者の銘が入っていないので写しなのかも。それとも習作かな?
習作だとしたら、同じような構図の作品があるかもと色々探してみたのですが、見当たらず...

ただ、こうやって子供が防空頭巾を被っていることがモチーフになるのは、終戦間近だったのではないかと思います。
鞄に挟まれた紅白の旗が手旗信号の物だとしたら、それを授業で習い始めるのは、これもまた終戦間際のようです。
そこから、昭和19年頃を描いた、またはその当時に描かれた作品ではないかと思います。

ただ、その当時の子供がこんなにふくよかで良いのかな?
けれど、だからこそ安心してこの絵を観れるのですけどね。