2020年4月29日水曜日

土方久功の彫刻


土方久功の彫刻作品の多くは戦後に制作されたものですが、その根源には彼の南洋パラオでの生活体験があります。
ですから私は、彼を戦後の彫刻家と言うことに躊躇します。

彼の作風は原始美術的であり、表現主義的です。
その美術はナチスドイツ下では退廃美術と呼ばれました。
日本においてもこのような前衛美術は、民意の下で抑え込まれます。

戦時下では土方久功の彫刻は評価されなかったでしょう。
また戦後の前衛、抽象彫刻にとっては時代遅れの作風です。
この真空の場所に土方久功はいます。
だから私は、彼を遅れてきた近代彫刻家と呼びたい!

南洋を戦後になって表現したものを上げれば、水木しげる先生の戦記物や諸星大二郎先生の「マッドメン」、本多猪四郎監督の東宝映画「モスラ」ですね。


水木しげる先生の戦記物がそうであるように、私たち日本人にとって南洋はユートピアでありながら、私たちの作り上げたデストピアでした。


この思いが戦後のエンターテイメントとしての「南洋物」を生みだしたのだと思います。
土方久功の作品もそれに連なるものだと思います。
土方久功は、私にとって戦時下の彫刻家です。

追記:だからこそハリウッドのモスラが中国産なのは納得いかない!

0 件のコメント:

コメントを投稿