著者のブログがあったので、リンクします。
「前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ」は、戦前の社会思想史と当時の美術について、その互いに尻尾をかみ合った蛇のような関係を論じた本だ。
とにかく面白い。
僕自身がそういった歴史に興味を持っていたし、考えてもいたのだけど、美術の側からは、ここまでしっかりした資料や書籍はなかったように思います。
こうやって本になったのだから、やっぱり需要があったのでしょう。
当時の前衛の思想といえば、左派が強いわけで、この書でも多くの紙面を割いて書かれているのだけれど、その中でしっかりと右派の美学、しかも藤田や大観などの巨匠でない人物、右派雑誌『原理日本』の「田代二見」なる人物にスポットを当てた文章が興味深い。
二度言うけど、本当にこういう本ってなかった。
戦後の思想(左派)的な美術本や雑誌は無いわけじゃないのだけど、そういった見方から戦前を語っているわけで、やっぱり偏っているんですよね。
または、当事者だったりすると全体が見えないのかもしれませんね。
こういう本が無かったということは、戦後の左派美大生たちは、戦前の思想史をどこまで学んでいたのだろう、戦前の活動の失敗をしった上で自分たちの活動をしたのかと思っちゃいますね。
とにかく、この本で一番面白かったことは、当時の若者の社会思想の未熟さがなんであれ、アナだろうがボルだろうが混沌としていた時の方が美術的には良い作品が出来ていたと、身も蓋もないことを書いてる点です。
僕の持っている書籍から、「構成主義芸術論」アリエクセイ・ガン作 黒田辰男譯 昭和5年発行、村山知義デザインの「プロレタリア児童文学の諸問題」槙本楠郎著。
後は神原泰著「新興芸術の烽火」とか
こういった本は高価でなかなか手が出ない。
戦後の左派本も集めていたけど、こっちは数がありすぎて止めました。
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