2016年10月2日日曜日

堀江尚志に就て

突然変異による特異点が生まれ、徐々に必要なカタチに推移していくような進化。
めちゃくちゃ首の長いキリンが生まれ、その子孫が徐々に現代のサイズとなっていくような....
そんなのが実際あるのかどうかわかりませんが、戦前の彫刻についてはあると思っています。

そんな特異点の作家とは、橋本平八堀江尚志です。
特に堀江尚志がそうですが、舟越保武ら同世代の彫刻家に大きな影響を与えます。
そして、私の思うところではどんな作家も彼ら自身を超えることはできなかった。

彼らの特徴は、その近代性(モダン)です。
橋本平八の現代性というとわかり辛いですが、過去を志向する「右派」と革新を志向する「左派」が、どちらも社会革命を目指している点で同じだということです。(さらにわかり辛いか...)

堀江尚志の作風も、エジプト彫刻やロダン、マイヨールなどからの影響はあると思いますが、より洗練されており、戦後のモダンな日本人像彫刻の祖となります。

ここで重要なのは「日本人像」だということです。
簡単に言えば、堀江は日本人を初めてモダンに描いた彫刻家なのだと。

当時、彫刻というのは、モデルをそのまま描くものでありました。
ただし、当時の日本人は「近代的」な視点で美しいとは言えず、よって彫刻作品もそうでした。
そこで、堀江以前から作家による抽象化がなされ、できるだけ美しい顔、形へと工夫がなされます。
絵画においては、明治以降の絵画に多く見られるように、まるで西洋人のような日本人が描かれます。
しかし大正時代となって、「カワイイ」がモダンに取り入れられた結果、特に日本人女性像の描き方に変化が現れ、より「モダン」な日本人像を描く手法が確立しだします。

彫刻においては、それが堀江尚志なのだと、私は考えています。
その完成形が彼の「少女座像」ではないかと。

さて、ここで堀江作品(伝)の紹介です。



彼の作品に「」はありますが、この鶏は本当に彼の作かどうかよくわかりません。
裏側に「某卵店主の注文にて作りたる珍品なり」「堀江尚志作品」「原作堀江氏」「制作馬橋○造」とありますが、この製作者もよくわかりません。
といいますか、橋本平八に比べ、堀江の資料が少なすぎてなんとも...
この作品が今後の研究材料になればと願います。

牧雅雄に陽咸二、そしてこの堀江尚志と、昭和10年に亡くなった作家作品は、少しづつでもコレクションしていきたいです。

2 件のコメント:

  1. 製作者として書かれている人ですが、苗字の最初は「馬」ではなく「髙」だと思います。「氏」の前は私にも「造」に見えますが、これを書いた人は、「三代目髙橋万治」のことを言いたかったのでしょう。三代目高橋萬治は、盛岡の南部鉄器職人で、堀江尚志原型の《横川省三銅像》の鋳造などを担当している人です。

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  2. 大変貴重な情報をありがとうございます。
    髙橋万治について調べてみます。
    横川省三銅像は昭和7年の建立なので、その頃の作品かも知れませんね。

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