2013年6月10日月曜日

Intermission  戦時下の痕跡本 太田三郎著 「スケッチの描き方」


太田三郎は、 愛知県生まれの画家で、洋画は黒田清輝、日本画は寺崎広業に師事。挿絵をよくし、矢田挿雲著「太閤記」や 正木不如丘集「ゆがめた顔」などがある。スケッチや挿絵に関した著書も多数執筆。
この「スケッチの描き方」もそういった技法書のひとつで、昭和2年に崇文堂より発行されています。
僕の手にしてる本は、その14版で、 昭和17年に発行。
このロングセラーのわけは、下の画像にあるように、軍事に用いられたからかもしれません。



この「陸軍予科士官学校」の文字は、裏表紙と、見返しに書かれたものです。
見返しには他に軍の許可證が張られています。
この本が陸軍予科士官学校にいた58期の生徒のものだったということなのでしょう。


中には、こんな等身を描いた落書きも。

陸軍予科士官学校とは、市ヶ谷台にあった士官候補者となる生徒が学ぶ日本軍の教育機関でした。
この本も、彼らの余暇のためというわけでなく、軍利用、偵察や観察目的に用いられたのでしょう。
従軍画家として多くの美術家が動員された先の戦争でしたが、こういった技術もまた軍によって用いられたということなのでしょう。

58期は戦争末期にあたります。この持ち主はどうなったのでしょうか。
この陸軍予科士官学校の映像がありますのでここに...

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