2013年2月17日日曜日

朝鮮に渡った近代彫刻たちに就て

平櫛田中作「平安老母」 李王家美術館蔵

日本から盗み出された仏像の所有を巡って、韓国世論には様々な意見があるようで、 これには近代の根本をなす「所有」と「国家(国民)」という思想の問題や国民感情もあいまって、なかなかやっかいな問題のようです。
「韓国併合」や当時の朝鮮と日本との文化的交流を政治的にどう判断するかは、各人で色々あるでしょうが、ただし、当時において相互的な「交流」 だったと考える者がいたことは確かです。
況んや純粋無垢を信条とした美術家たちをや。

東京美術学校では朝鮮出身者が学んでいたし、 1922年からは日本の官展を模した朝鮮美術展覧会が行われます。(ただし、この鮮展では彫刻の部が無いのですが)
また、美術品は朝鮮から内地に渡っただけでなく、内地から朝鮮に渡った美術品もあり、李垠(英親王)が収集した官展出品作からのコレクションが李王家美術館に所蔵されます。
この所蔵品は現在、韓国国立中央博物館にあり、その日本室に展示されています。
所蔵されている日本近代西洋画の所蔵数が40点らしいのですが、これはやはり少ない気がしますがどうでしょう。彫刻については何点渡ったのでしょう。
以前紹介した構造社の後藤清一の作品が一点、現在その韓国国立中央博物館で確認できるようです。

 上で紹介した絵葉書、平櫛田中作「平安老母」もまた李王家美術館蔵に所蔵されたもののようです。現在も所有されているのかはわかりません。
この 「平安老母」は2躰あり、片方は田中美術館にあります。これらは、服の絵柄などが少し異なります。

また、下の絵葉書は、「徳壽宮陳列日本美術品絵葉書」として、北村正信の大理石彫刻「凝視」が含まれています。


この作品は、1929年(昭和4年) 第10回帝展出品作です。これもまた、李王家所蔵のものでしょうか。

 こういった韓国所蔵の美術品は、最近になって発表、展示されるようになったそうですね。前述の仏像だけでなく、このような近代彫刻作品の研究も是非進めていただきたいものです。

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