2017年2月14日火曜日

大正15年 独逸現代美術展覧会 カタログ

大正15(1926)年に行われた独逸現代美術展覧会のカタログを手に入れました。
以前から何度か話題にしていました日本での表現主義受容。
これを知る上では、是非見ておきたかったカタログです。

出品彫刻家(日本語名は原文のまま )
ルドルフ・ベーリング Rudolf Belling

エリザベト・セザール Elisabeth Caesar
ルドウヒ・カウエル Ludwig Cauer
フリツ・クラウス Fritz Claus
ルドウヒ・ダヂヲ Ludwig Dasio 
エルネスト・デ・フィヲリイ Ernest De Fiori
ヘルベルト・ガルベエ HerBert Garbe

ヘルマン・ガイベル Hermann Geibel
ルドウイヒ・キイス Ludwig Gies(メダルを出品)
ヘルマン・ハアン Hermann Hahn
ビリブ・ハルド Philipp Harth
ヲイゲン・ホフマン Engen Hoffmann
ハラルド・イゼンスダイン Harald Isenstein(メダルを出品)

カアル・クナベエ Karl Knappe(メダルを出品)
プリツ・ケレ Fritz Koelle 

ゲチルグ・コルベ  Georg Kolbe

ゲルハルド・マルケ Gerhard Marke
ゲオルグ・ミユラー Georg Mneller
エミー・レデル Emmy Roeder
エドウイン・シヤルフ Edwin Scharff

ケーテ・シヨイリヒ Kaete Scheurich
チエ・エム・シユライネル C.M.Schreiner
レエネ・シンテニス Renee Sintenis

ハンス・デビイヒ Hans Teppich

アルベルト・ウイレー Albert Wille
パウル・ツアイレル Paul Zeiler
ウイリー・チウゲル Willy Znegel

カタログを抜粋
 



★マークのある作家は、1937年の退廃美術展に出品され烙印を押された作家たちです。
作風の違いによって、生の明暗が分かれてしまった悲劇ですね。
この独逸現代美術展覧会が行われた1926年は、ヒトラーの党内独裁権がほぼ確立したハンベルク会議が行われた年です。
このタイミングで無ければ、このように独逸の主要な彫刻家の作品が見られることは無かったでしょう。
ただ気になるのは、この作家の中に当時のドイツで人気のあった彫刻家エルンスト・バルラハの名前が無いことです。
当時、木彫作品の輸送は困難だったからかもしれませんね。
ここで、バルラハの木彫を鑑賞する機会が日本にあったなら、もしかしたら日本彫刻史が変わったかもしれません。

表現主義作家では、エドウイン・シヤルフ Edwin Scharffの出品があります。
彼の紹介には、『1887年ミュンヘン美術工芸学校及美術学校を卒業し、絵画をも良くし各国に学びて、表現派となり、その派に重きをなす。』とあり、「表現派」という言葉が使われています。
この日本で、彫刻の表現主義に言及した作品を鑑賞できたのは、これが最初だったかもしれません。

また、展示の作品の中には、メダルが複数あります。
メダルが芸術表現の一部とされる欧州にあって、これらも日本への展示品にと選ばれたのでしょう。
ただ、その写真が掲載されてなく、どんな図柄だったのかがわかりません。
もし、その図柄がわかれば、それに影響を受けた日本の作家があったかなど、色々と調べてみたいことも増えるのですが。

それと、このカタログの発行は国民美術協会ですが、編集及び発行は彫刻家の小倉右一郎になっています。
なんでもするなぁ~この人は。
小倉のセレクトだろう写真掲載の作品には、彼の作風とはまったく異なる前衛的な作品が多く含まれており、小倉右一郎の器量の広さを感じさせます。
流石です。
ただ、メダルの写真が無いのは、小倉がメダル作品を商業デザインだと考えていたからかもしれません。
小倉右一郎のメダルって、未だ出会ったことが無いのですよね。

ちなみに、この展覧会に出品された絵画も前衛的なものが多かった。






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