2021年1月18日月曜日

荻島安二 作「第八回全日本女子籠球総合選手権大会 参加賞」メダル



数年前に荻島安二の「第七回全日本女子籠球総合選手権大会 参加賞」メダルを紹介しました。
https://prewar-sculptors.blogspot.com/2014/01/blog-post_3.html
今回は同じく荻島安二による昭和13年に行われた第八回参加賞メダルになります。

このメダルに描かれているのは、ジャンプボールかリバウンドを取り合っている姿。ゴールを中心に円形に沿って配されてい二人の女性像です。
荻島安二のメダルはお洒落でモダンな作品が多いのですが、このメダルは可愛い。
バスケという激しいスポーツからすれば、可愛くやりすぎな気もしますね。

そんな「可愛い」がどのように生じているかを考えてみると、高村光雲がロダンを未完成だと言った以上の未完成性が理由の一つだと思います。これは幼児性とも言えます。
つまり、今ではもう古い言葉ですが「ヘタウマ」なんですね。
当時の先端芸術であった抽象彫刻とは違う方向、つまり禅画や文人画、ポンチ絵や漫画に近い所で彫刻表現を行っていると感じます。
それは、荻島安二がマネキンを制作する商業デザイナーでもあった事と関係あるのでしょう。

このメダルが世に出た昭和13年は、国家総動員法が成立した年です。
時代はきな臭くなりますが、荻島安二が表現した「可愛い」は、当時のプロパガンダを利用さえし生き残ります。
それは「桃太郎 海の神兵」のようなアニメや、中原淳一の少女が描かれた慰問絵はがきだったりします。
こういった時代の中で表現された「可愛い」彫刻が、「第八回全日本女子籠球総合選手権大会 参加賞」メダルなのだと思います。
当時の官展などの大文字の美術史では見逃されますが、こういったメダルの仕事に当時すでにあった「可愛い」もとい「Kawaii」彫刻を見ることができるのですね。

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