2020年2月9日日曜日

濱田三郎作 昭和9年「水上競技日本選手権大会」メダル



「水上競技日本選手権大会」は、大正14年から現代まで続く水上競技大会で、昭和9(1934)年の第10回大会にはアメリカの選手も参加しました。

メダルには『二等 片山兼吉 800米リレー』と刻まれています。
彼が800メートルリレーで出場し、入賞した時に手渡されたのがこのメダルのようですね。
彼は1932年のロス五輪の代表入りしています。残念ながら出場はできませんでしたが、戦前の「水泳ニッポン」において活躍した選手だったと思われます。

同じく刻まれた『9:25.0』はタイムですね。
この大会の1位は9分15秒でした。
そして、前述のロス五輪では8分58秒4で日本チームが金メダルを取ります。
現在の800メートルリレーの日本記録は、2009年に行われた第13回世界水泳選手権での7分02秒26だそうです。
ロス五輪から2分近くも短縮しているのですね。

さて、このメダル原型は構造社の作家の中でも構成主義的な作品を制作した濱田三郎です。
メダルの中心辺りに直線を水面に見立てて配置し、飛び込む姿を直角を用いて表し、幾何学的な構成を行っています。

濱田三郎メダル(コレクションより)
https://prewar-sculptors.blogspot.com/2013/03/blog-post_6.html

このような前衛表現の初期の作家に村山知義がいます。彼が『コンストルクチオン』を発表したのが大正14(1925)年。
http://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=4912
高村豊周の『挿花のための構成』が翌年の1926年。
そうやって見れば、この濱田三郎のメダルは10年遅れの表現だと言えます。
そのうえ、構成を主としたために、彫刻としてのボリュームに欠けてもいます。
ですが、当時に於いてこのような前衛表現をメダルに用いた作家はいたでしょうか?

私は海外のメダル史に詳しいわけではありませんが、欧米のメダルはその歴史があるからこそ、前衛表現が現れ辛かったのではないかと考えています。
イヴァン・メシュトロヴィッチ以降のメダル表現で、構成主義や幾何学的抽象をメダルに込めた海外の作家はどれほどあったのか。
(フランスはなお更、ドイツのバウハウスはメダルを古い表現媒体として見ている様だし、その次はナチ的な表現の古典回帰。どうもソ連のメダルにありそうだけど...)
もしかしたら、当時に於いて日本のメダル表現は最先端では無かったのか...そんなことを考えています。

もし、当時の海外のメダルの表現で私の考えを覆すような作品があれば、是非教えて下さい!!

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