魚崎尋常高等小学校の蔵書であった「模範学生手工作品集」です。
明治6年に創立された魚崎尋常高等小学校は、現在の神戸市立魚崎小学校です。
戦時下、昭和13年発行。学校の蔵書になったのもこの年の様で、当時の児童が読んだのでしょう。
この作品集では、海外の学生を含め、8才児から東京美術学校の学生まで幅広く掲載されています。
興味深いのは、東京美術学校師範科学生による「コンクリート製植木鉢」と、コンクリートの研究が東京美術学校で行われている事や、いくつかある灰皿のモダンなデザインですね。
また時局柄、戦車や空母の模型もあります。
ドイツの学生によるプロパガンダポスター「冬季教育事業の爲の行進」は、18歳の少年による作品です。
編集は久保彌一郎、発行元は日本工藝学檜です。
編集の協力者は
・東京高等師範学校 阿部七五三吉
・同上 田原輝夫
・東京工藝学校 畑正吉
・東京美術学校 松田義之
彼らによって作品の選択が行われたと考えられます。
東京高等工藝学校彫刻部学生による「置時計」は畑正吉による指導の影響を強く感じます。
特に『無意味な装飾を拝して、意匠を要約』という、装飾を拝するわけではなく、装飾デザインの抽象化、簡素化する方向性は、同時代のバウハウスなど工業デザインへのアプローチとも異なる彼独自の思想です。
言うなれば、まほうびんにデザイン化された花柄を印刷するよなものなのかもしれません。
それは、現在の無印良品のようなデザイン的に簡素な商品を好む客層とは異なりますね。
ただし、まほうびんの花がキャラクターになるとまた話が変わります。
サンリオの最初の成功は花柄を付けたゴム草履でした。つまり「かわいい」という付加価値をデザインに込めることで、商品価値が高まるわけです。
「かわいい」を込めるために、猫のデザインから『無意味な装飾を拝して、意匠を要約』することであのキティちゃんも生まれました。
つまり、畑正吉の当時のアプローチは、キティちゃんとして結晶した...と言えるのかもしれません。
カタツムリの時計はその一歩なんですね。カタツムリでは女性受けしそうにありませんが。
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