この 「塑像群 《農奴の怒り》」は、1977年に中華人民共和国にて発行された彫刻作品のカタログです。日本語で表記されています。
つまり、中国によるアートを用いた日本向けのプロパガンダ本なんですね。
複数人の共同制作作品で、中央五・七芸術大学美術学院教師及び潘陽魯迅学院の教師、そしてチベットの芸術家たちによるものと記されています。
等身大の人物像が106点、動物像6点、舞台のような構成がなされています。
赤茶色の像であるからテラコッタなのでしょう。
この作品は、抑圧されたチベットの民が中国人民解放軍とともに領主らに反乱、共産主義の道を歩んでいった姿を彫刻としたものです。
第一部に封建領主と、彼らによって牛馬にも劣る生活を強いられたチベット民を、第二部ではその現状を肯定し、それに反する民を苦しめぬくチベット寺院を、第三部では支配機構「ガシャ」を描いた構成となっています。最後の四部で農奴たちの反乱及び共産党への強い支持が描かれます。
彫刻として描かれた人々は、とにかく舞台映えする演出がなされ、あえて言えばカッコいい!
戦前は西洋美術を日本から西洋美術を学んだ中国ですが、この塑像群は日本的な表現というよりロシアプロパガンダ的な表現に見えます。
そんな表現をアジア人に用いて大成させた作品だと言えるでしょう。
ここまでアジア人を情熱的に、演技的なリアリズムで描いた作品、ここ日本では未だかつて無いと思います。
もしかしたら、今の北朝鮮にも無いのかもしれません。
プロパガンダであること、今のチベットで苦しんでいる人がいることを抜きにして語れば、とても奇妙でエネルギッシュで、魅力的な作品です。
私はここで戦前中のメダル等を紹介していますが、この作品たちの一部はプロパガンダであり、今回紹介した「塑像群 《農奴の怒り》」と同じものなんですよ。
ですからあえて「魅力的」と言います。
けれど、どこかの誰かを傷つけた、傷つけているモノであることを忘れないようにしたいですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿