「皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ」
この東郷大将とは、日露戦争でロシアのバルチック艦隊を破った東郷平八郎のことであり、当時において、日本のヒーローの一人でした。
作者である泉二勝磨は、面白い経歴の持ち主です。
明治38年に生まれ、昭和4年に東京美術学校を卒業し、フランスに留学、ジャン・デュナンに師事し、中世絵画、彫刻を研究します。
その師ジャン・デュナンは、工芸家であり漆作家と知られています。フランス汽船「ノルマンディー」の装飾には泉二勝磨と共に従事しました。
泉二勝磨は、ドイツによるフランス侵攻から逃れるため帰国、後に二科展に出品します。
当時の二科会は在野の団体であるがゆえか、官展よりもナショナリズム寄りの傾向があり、この作品もそういったものだったのでしょう。
二科展にて「国土を譲る」等の彫刻を出品した渡辺義知らは、戦後となり、そのために二科会を去ることとなります。
1942(昭和17)年には、そういったナショナリズム的傾向を強く押し出した彫刻家団体「造営彫塑人会」に参加。高村光太郎、清水多嘉示、中村直人らによって結成された団体でした。
その前年、1941(昭和16)年に行われた第二十八回二科美術展覧会に(未完)として出品されたこの作品ですが、人物よりも、その手にした刀の造形の美しさに作家の個性を感じますね。
彼は戦争末期の昭和19年に40歳で亡くなります。日名子や陽咸二、橋本平八等々、戦争末期に若くして亡くなった彫刻家は本当に多いです。
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