本物と本物らしい偽物があって、そこに本物になろうという意志があるだけ、偽物のほうが本物よりも価値がある、とは「偽物語」の貝木泥舟の台詞ですが、今日紹介するのは、そういった偽物もとい、模して作成されたメダルたちです。
当時のメダルには作家のサインが入っており、それが無いものは模造と考えられます。
まず、一番上のは以前も紹介しました日名子実三原型の「第7回明治神宮体育大会」メダルです。1933年(昭和8年)に用いられました。
その下は、市立名古屋商業学校「寒稽古賞」メダル、 1934年のものです。
そして次は、これも日名子実三原型の「大六回横断競争 関東陸上競技協会」メダルです。
その下の貧弱な韋駄天像の方は、大阪毎日新聞社京都支部主催「京都市学童体育大会」1940年。
日名子の明治神宮のメダルのモチーフは人気があり、他にも似せて作られた、作家のサインの無いメダルが幾つかあります。
当時において、作家の著作権は曖昧であり、所有権もまた曖昧でした。ですので、商業学校という公の、しかも著作権を何よりも教えなければならない学校が用いたり、また近代の促進を担うはずの新聞社によって用いられたりしています。
丸山真男が嘆くわけです。
こういったことが問題というより、近代的所有の概念の発達史として見るとおもしろいのではないでしょうか。
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